今回もワープハウスについて書いていきたいと思います。
1995年8月に NAO NAKAMURA とオーガナイザーでもある SAWA の 2人をレジデントとしたパーティ「CLUB LOVELY」が始まりました。
X-TRA、CROSS OVeR と並び、ワープハウス 3大パーティの中のひとつです。X-TRA 同様、レジデント DJ を基本に開催され、海外からは Blu Peter と Mrs. Wood を招いたのみです。
今回はそのパーティのオフィシャルミックス CD でもある、表題の CD「CLUB LOVELY HAPPY CLASSICS」を紹介します。

選曲と Mix は SAWA、最後に収録されている「HOT SHOT’98」のリミックスは NAO NAKAMURA 担当です。
発売は 1998年3月18日。「ワープハウス」というジャンルが日本で根付いてきた頃でもありました。(それまではハッピー系、ハードバッグ等色んな呼び名でした。)
この CD にも YO-C の Mix 同様、クラブ雑誌「LOUD」編集長 DJ19 の詳細なライナーノーツがあるのでそれを記載しながら注釈をつけていきたいと思います。
↓↓↓以下、「HOT SHOT’98」に付属する、LOUD 編集長 DJ19 によるライナーノーツ↓↓↓
1. Dave Angel - THIS IS DISCO(IAN POOLEY’S HYPERDISCO REMix)
父親がジャズ・ミュージシャンという環境で生まれたデイヴ・エンジェルは幼少の頃から音楽に囲まれた生活をし、最初はドラマーとして活躍していた。
イギリスでデトロイト・テクノを継承するクリエイター/DJ であり、繊細ながらもアッパーなトラックを作る事からテクノ/ハウス両方のファンに支持されている。
リミックスを手掛けたイアン・プーリーはドイツの FORCE INC を拠点に活動し概してディスコ・テイストの作品を得意としており、デイヴ・エンジェル同様テクノ/ハウス両方から評価されている。
2. Karen Young - HOT SHOT’97(DA TECHNO BOHEMIAN DIRTY DUB Mix)
78年に WEST END からリリースされたカレン・ヤングの代表曲の 97年バージョン。彼女は 91年1月26日に 39歳の若さでこの世を去っているが、名曲は時代を越えて愛され、こうした形で甦る事になった。
97年の 8月23日、CLUB LOVELY の 2nd ANNIVERSARY に於いて SAWA がこの曲をプレイした事から日本で爆発的なヒットを記録。某カウントダウン系TV番組でも頻繁に取り上げられた。
リミックスを手掛けたダ・テクノボヘミアンは、タイリーの「Turn Up The Bass」を使用した「Bangin'Bass」のヒットで知られるクラブヘッズの変名ユニット。
3. D.O.P - GROOVY BEAT(GOODFELLO`S Mix)
SHOOM で出会ったケヴィン・ハリーとケヴィン・スウェインのコンビからなるユニット。D.O.P とは DANCE ONLY PRODUCTIONS の頭文字を取ったもの。
この曲はもともとウィリアム・オービットが運営する GUERILLA からリリースされたもので、D.O.P はレーベルの盟友リアクト2リズムらとプログレッシヴ・ハウス・ブームを巻き起こし、92年にはアルバム「Musicians Of Mind」を残している。
で、このリミックス盤は先ごろクローズした HI-LIFE から 96年にリリースされ、全英 54位を記録。リミックスを手掛けたのはトール・ポールとティンティンアウトから成るグッドフェローズ。
4. MARY KIANI - 100%(TALL PAUL REMix)
「キミの瞳は100%」というお茶目な邦題が付けられたスコットランドのディーヴァの作品。ザ・タイムフリクエンシーを経てソロとしての 4th シングルで、ソングライティング/プロデュースにワン・ワールドこと、元デッドオアアライブのティム・レヴァー&マイク・バーシーが参加。リミックスを手掛けたのはトール。ポール。トッドテリーが CLS 名義で 91年に STRICTLY RHYTHM からリリースした「Can you Feel It」をネタに使用していることからも話題となった。
オリジナルは「ファンキー・ドリームス〜キミの瞳は100%」に収録。
<イオ注釈>
この曲は当時どこに行ってもかかってました。(オリジナルではなく主にトールポールのリミックスの方。)
ワープハウス好きでこの曲を知らない人は正直あまりいないんじゃないかと思います。
歌ってる MARY KIANI の方はその後名前を見る事はあまりなかったので所謂一発屋って感じだったかも…。
5. Loop Da Loop - GO WITH THE FLOW(DEX & JONESEY`S FRUITLOOP DUB)
DJスープリームことニック・ドスティが使用する名義の 1つがループ・ダ・ループである。
この名義ではジセル・ジャクソン、ザ・スペース・ブラザーズ、ビッグフォースなど多数のリミックスを手掛けており、最近の MANIFESTO 盤には殆ど彼のリミックスが入ってるといってもいいだろう。DJスープリーム名義では「Tha Wildstyle」のヒットが有名で、この曲でヒップバッグ・ブームに拍車をかけた。リミックスを手掛けたのはジョシュ・ウインク「Higher State Of Consciousness」のリミックスで一躍脚光を浴びた 2人組、DEX & JONESEY。
6. Red 5 - I LOVE YOU…STOP!(EXPERTS REMix)
ジェネラル・ベース、T.H.K、キャンディ・ビートらの名義で作品を送り出してきたドイツの THOMAS KUKULA が仕掛けたプロジェクトが RED 5 である。
この曲は RED 5 としての 2ndシングルで、UK にもライセンスされ 11位を記録。リミックスを手掛けたエクスパーツは、<TRADE>や<DTPM>らのゲイ・パーティでレジデントDJ を務めるスティーヴ・トーマスとポップなリミックスを得意とするダンスング・ディーヴァズの合体ユニット。この曲はオリジナルを含めてデビュー・アルバム「フォーセズ」で聴く事が可能。
7. Tinman - Gudvibe(MAMBOLICIOUS Mix)
80年から DJ として活躍し、DMC 機構にも属す PAUL DAKEYNE のプロジェクトがティンマンである。彼は U2 の KITCHEN CLUB でレジデント DJ を務めた事もある人物で、リミキサーとしてもベース・オ・マティック、イレイジャーなど数多くの作品を手掛けている。
そんな彼が 93年終わりにホワイトでリリースしたのがニルヴァーナにインスパイアされたという「18 Strings」だ。
Tinman - 18 Strings
この曲は後に FFRR からリリースされ 94年全英 9位を記録。
ロック・サンプルのクラブ・ヒットを量産させるキッカケとなった。「Gudvive」はそれに続くシングルで 95年全英 49位を記録している。
8. Red 5 - LIFT ME UP(EXPERTS REMix)
3rdシングル。典型的なピチカート・ハウスであるオリジナルを調理したのは「I Love You Stop!」と同じくエクスパーツ。本人達曰くこれが UK ハードハウスという事だが、
ハードバッグもしくはワープハウスとカテゴライズされるサウンドである。エクスパーツは「TRIPOLI TRAX」を拠点に活動し、これまでに 2枚のシングルをリリースしている他、J.P「Sexy Thing」やナチュラル・ボーン・グルーヴスらのリミックスを手掛けている。
<イオ注釈>
ピチカート・ハウスとは「Faithless - Insomnia」に代表されるような、SAW オシレーターの音色から出るようなピチカート音を使った曲です(サビ部分。)
LOUD の執筆 DJ らにより使用され始めたのが国内での始まりで、曲によってはエピックトランスとも言われる事もあります。
9. BMF - GOLDEN(ORIGINAL Mix)
BMF とは“BITCH MOTHER FUCKER”の略でございます。下品ですな。リッキー・モリソン&フラン・シドリのコンビによる A面の M&S のヴァージョンは普通のハウス DJ に使用されたが、ワープハウス DJ は B1 のオリジナル・ヴァージョンをプレイ。
プログレッシヴ・ハウスを進化させたようなサウンドで、SAWA のようなトランシーなサウンドを好む DJ には重宝された。
リリースは 4TH&BROADWAY から。このレーベルは ISLAND が 84年の 1月に設立したもので、当初のコンセプトはアメリカのインディペイメント・レーベルの作品をピックアップし、イギリスのクラブ・マーケットをターゲットにするというものだった。
10. INTO THE FIRE - Floor Federation V Disco Sluts
前曲同様 4TH&BROADWAY からのリリースで、レコ番続きの作品。かなりレイヴィーで、<TRADE>のレジデント DJ でもあるトニー・デ・ヴィット辺りが好んでプレイするタイプの曲。
このレコードのリリース時である 97年は、日本ではデス・テクノと呼ばれたハードコア・テクノの全盛期の作品をヴァージョンアップしたようなものが多くリリースされた年でもあった(ちなみにこの曲のレコーディングは 96年12月に行われている)。
なお、B面のタイトルは「Into The Deep」となっており、よりハウシーなテイストに仕上がっている。
11. JX - YOU BELONG TO ME(JX/RED JERRY REMix)
レッド・ジェリーが運営する HOOJ CHOONS の中で 1番ヒットを連発しているのが JX である。LONDON 傘下の FREEDOM を通してリリースされていることもあり、この曲も 95年全英 17位を記録。
JX とはジェイク・ウィリアムスによる 1人ユニットで、彼はリミキサーとしてもアンドロニカスや DCo2 らの作品を手掛けている。
HOOJ CHOONS といえばこうしたテイストの作品が多かったのだが、最近はエピック・ハウス系の音源に力を入れており、ドイツからのライセンスものが増えている。
その他はサウンド別に PROLEKULT、TOP BANANA、BLUE BANANA、SHINING PATH(休止中)とサブ・レーベルからリリースを続けている。
12. Army of Lovers - CRUCIFIED(CANDY GIRLS REMix)
世にも恐ろしい?男女混成グループ。いわば 90年代版デッド・オア・アライブといった趣で、どのジャケットも手に取るのを躊躇するぐらいのインパクトを持っている。
この曲はもともと 96年にリリースされた「Give My lIFE」の B面に収録されているキャンディ・ガールズのリミックス・バージョン。キャンディー・ガールズは元デザイナーで現在人気 DJ のレイチェル・オウバーンとクリエイターのポール・マスターソンから成るコンビ。
ただ、この曲にはレイチェルの名前しかクレジットされていない。
<イオ注釈>
CANDY GIRLS はワープハウス的にとても流行った重要なユニットなので、後々特集したいと思います。
13. Sash! Featuring La TrecSTAY(MAGNIFICIENT 4 REMix)
フェイスレスが流布したピチカート・ハウスにすぐさま飛びつき、本家以上にヒットしてしまったドイツの DJ、SASCHA LAPPESSEN のユニットでもある SASH!。
96年4月に「It's My Life」でデビューし、2nd の「Encore Une Fois」で人気爆発、イギリスでも MULTIPLY にライセンスされ 97年全英 2位。その後「Ecuador」「Stay」がカットされいずれも全英 2位。
また、カドックやスペース・フロッグなどのリミックスも手掛けるなどしヨーロッパでの人気は絶大な上、現在アメリカでもブレイク中。ちなみにフェイスレス、DJクイックシルヴァー、SASH! の 3組は、一部でピチカート・ハウス御三家とも呼ばれている。
14. Escrima - DEEPER(Matt DAREY EXTENDED Mix)
<イオ注釈>
Escrima はこの連載の第4回でトールポールで紹介した彼の別名義である。
彼が使う名義の中の 1つがエスクリーマである。1st シングルは「Train Of Thought」で、この曲は 2nd シングルとなる。95年全英 27位。
リミックスを手掛けたマット・ダレイはスペースベイビーやビー・ボーイ・アクション・スクアッドなどの名義で作品をリリースしている他、キム・ワイルドやピーチなどのリミックスも手掛けている。
15. PULP - COMMON PEOPLE(MOTIV 8 Mix)
ライヴ・デヴューは 80年、レコード・デビューは 85年という長い活動歴のバンド、パルプ。そんな彼らをスターダムに押し上げたのがこの曲で、95年全英 2位を記録。リミックスが功を奏し、ロックに於けるダンス・リミックスの成功例の手本みたいな曲となっている。
リミックスを手掛けたのは MOTIV 8「モーティヴェイトと読む」ことスティーヴ・ロドウェイで、最近ではジーナG やダニーのプロデューサーとしても有名。MOTIVE 8 としては「Rockin' For Myself」「Break the Chain」「Seaching For The Golden Eye」のヒットを放っている。
また、パルプでは「Disco 2000」のリミックスも手掛けている。
<イオ注釈>
MOTIV 8 はこの MixCD の 4曲目、「MARY KIANI - 100%」のリミックスも手掛けていまして、派手なユーロ曲になっています。
16. Jimmy Somerville - BY YOUR SIDE(MISS YOU LIKE CRAZY Mix)
ブロンスキ・ビート → コミュナーズ → ソロと活動を続けるジミー・ソマーヴィルが POLYDOR 時代に残した最後のアルバム「デア・トゥ・ラヴ」からのカットで、95年全英 41位。彼の悲哀を帯びた歌声はゲイに生まれて来た孤独感、宿命みたいなものが凝縮されており、聴く者に深く訴えかける力を持っている。
それはブロンスキ・ビート時代の「Smalltown Boy」や「Why?」、コミュナーズ時代の「Victims」らの歌詞からハッキリと感じ取れるが、歌詞に直接的に提示されていなくても、
ゲイではない僕にまでダイレクトに伝わってくる。なお、現在彼はインディーで「Dark Sky」「Safe」を発表している。
17. JX - THERE′S NOTHING I WON`T DO(JX ORIGINAL Mix)
もう 1曲 JX。こちらは 96年全英 4位を記録。JX はこれまでに「Son Of A gun」「You Belong To Me」「There's Nothing I Wont'Do」「Close To Your Hert」と 4曲のシングルをリリースしており、いずれもクラブのみならず一般フィールドでも高い評価を得ている。この曲は、現在なら通称“朝方系”と呼ばれる、トランシーな要素を持ちつつも爽やかな雰囲気を醸し出しているタイプのサウンドを展開しており、パーティの終わりが近いことを感じさせる。
ちなみに現時点での“朝方系”一番人気は、シモン&ウールソンがサンダンス名義で REACT からリリースした「Sundance」である。
<イオ注釈>
朝5時近くなると流れた Sundance。これは後程改めて紹介しようかと思います。とりあえず Youtube を貼っておくので、夜明け近くにこんな曲が流れたんだなぁ、と想像してみて下さい。
Sundance - Sundance(Club Mix)
18. East 17 - STAY ANOTHER DAY(NOT SO SAD Mix)
今でこそガールズグループが盛況を極めているが、ついこの間までの 90年代はボーイズ・グループ一色という感じだったイギリス。その中の代表的なグループの 1つが EAST 17 だ。
この曲は 2nd アルバム「スティーム」からのカットで、彼らにとって初の全英 No.1 ヒットでもある。プロデュースを手掛けたのはストック/エイトキン/ウォーターマンの元から巣立っていったフィル・ハーディングとイアン・カーナウ。オリジナルは 94年のクリスマス・シーズンにリリースされただけある美しいバラードだが、ここではノン・ヴォーカルのヴァージョンを使用。
パーティの終了、朝の訪れを告げる曲といったところか。
↑↑↑以上、「HOT SHOT’98」に付属する、LOUD 編集長 DJ19 によるライナーノーツ↑↑↑
19. HOT SHOT’98(BAD ATTITUDE DUB Mix)〈SPECIAL BONUS TRACK
<イオ注釈>
MixCD のボーナストラックとして入っていた NAO NAKAMURA のリミックス。
この CD にも収録されている「HOT SHOT」のリミックスです。ボーカルはアクセント程度に、アップリフティングなトラックが展開されていきます。
98年発売当時、LOVELY でかかりまくっていたのが想像できます。
CLUBLOVELY の MixCD はほかにも出ており、次回はそちらを紹介していきたいと思います。
当時(1995〜1998年)の LOUD、ワープハウス関係のフライヤー(X-tra、CLUB LOVELY、CROSS OVeR 関連)をお持ちの方はレンタルか適価をお支払いするので是非情報を募集しています・・・!!
ツイッターアカウントは「DJイオさん (@lbtdjio) / Twitter」
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